本当は教えたくない路地裏の名酒場
最近、亀戸の居酒屋がSNSでも話題になることが多い。特に「めしと酒 と㐂」や「鉄板ホルモンダイニング ぶた鉄」なんかは、InstagramやTwitterで見かけることが増えた。確かにどちらも素晴らしい店だが、正直なところ、人気になりすぎて以前ほど気軽に入れなくなってしまった感がある。そんな中で、今回紹介する「寿々喜」は、まだそれほど知られていない隠れた名店だ。地元の常連客に愛され続けている、いわば亀戸の秘密基地のような存在である。本当なら自分だけの秘密にしておきたい店なのだが、あまりにも素晴らしいので思い切って紹介することにした。
店の雰囲気
引き戸を開けて店内に入ると、昭和の香りが漂う落ち着いた空間が広がっている。カウンター席が中心の小さな店内は、まさに町の居酒屋といった佇まい。常連らしき客が数人、静かに酒を楽しんでいる光景が目に入る。壁には手書きのメニューが貼られており、見ているだけでも楽しい。価格も良心的で、この辺りの物価を考えるとかなりリーズナブルな設定だ。
席につくと、まずは喉を潤したくなるので麦焼酎の炭酸割りを注文。店主が手際よく作った炭酸割りは、見た目からして美味そうだ。一口飲むと、麦焼酎の香ばしい風味と炭酸のシュワシュワ感が絶妙にマッチして、疲れた体に染み渡っていく。
魚介系から肉系まで、バラエティに富んだ料理が並んでいる。どれも手頃な価格で、あれもこれもと目移りしてしまう。結局、看板メニューらしき魚料理を中心に何品か注文することにした。店主らしき人物が厨房で一人で切り盛りしているようで、注文を受けると手慣れた様子で調理を始めた。どの皿も丁寧に作られているのが一目で分かる。決して派手さはないが、素材の良さを活かした家庭的な味わいが期待できそうだ。一人で営業しているとは思えないほど、手際よく料理が提供される様子に感心してしまった。

お通し 写真右からかぼちゃ煮・タラの煮物・牛しぐれ煮 小皿で小さな湯豆腐
しばらくすると、お通しが提供される。かぼちゃ煮は甘さ控えめで、ほくほくとした食感が心地よい。タラの煮物は上品な味付けで、魚の旨味がじんわりと口の中に広がる。牛しぐれ煮は甘辛い味付けが酒のつまみにぴったりで、ご飯が欲しくなるような味だ。小さな湯豆腐は優しい味で、お通しの中でもほっとする一品。これだけで十分満足できるレベルの内容だった。

出汁の効いた優しい味付けで、箸が止まらない「菜の花のお浸し」350円
春らしい菜の花のお浸しは、ほろ苦さが大人の味わい。茹で具合も絶妙で、シャキシャキとした食感が残っている。出汁の効いた優しい味付けで、箸が止まらない美味しさだ。季節感を大切にした料理で、日本酒がよく合いそうな一品。この価格でこのクオリティは文句なしだ。

上手な火加減でほくほくに焼かれた「銀鮭かま焼」600円
メインの一つである銀鮭のかま焼きは、まさに絶品だった。皮はパリッと香ばしく焼かれ、身はほくほくとして脂がのっている。火加減が絶妙で、中までしっかりと火が通っているのに、身がパサつくことなくしっとりと仕上がっている。塩加減も完璧で、素材の味を最大限に引き出している。

七味マヨネーズをつけて食べるのが旨い「えいひれ」350円
えいひれは炙りたてのアツアツが提供された。香ばしい香りが食欲をそそる。噛むほどに旨味が出てくる独特の食感で、酒のつまみとしては定番中の定番だが、ここのえいひれは特に上質だ。添えられた七味マヨネーズが意外にもよく合い、ピリッとした辛さがアクセントになっている。

こんがり香ばしく焼かれた「ブリかま焼き」600円
ブリのかま焼きも期待を裏切らない仕上がりだった。こんがりと香ばしく焼かれた皮と、中のジューシーな身のコントラストが見事。脂ののったブリの旨味が口の中いっぱいに広がり、思わず笑みがこぼれる。大きめのかまで食べ応えも十分。焼き加減が絶妙で、プロの腕前を感じさせる一品だった。

夏の縁日を思い出す「いか丸焼き」600円
最後に注文したいかの丸焼きは、どこか懐かしい味わいだった。まるで夏祭りの屋台で食べたような、素朴で親しみやすい味。いかの甘味がしっかりと感じられ、焼きたての香ばしさも申し分ない。シンプルな調理法だからこそ、素材の良さが際立つ。子供の頃の記憶を呼び起こすような、心温まる一皿だった。
どの料理も丁寧に作られており、価格を考えると驚きのクオリティだ。派手さはないが、確実に美味しい料理を提供してくれる信頼できる店。常連客が多いのも納得できる。いい店だから自分もまた来るし、読者の方も近くに寄ったらこっそりと行ってみてほしい。きっと新しいお気に入りの店になるはずだ。
この店のまとめ
- 昭和レトロな雰囲気
- 丁寧に作られた料理
- お通しが旨い
基本情報
- 店名:寿々喜
- 住所:東京都江東区亀戸6-15-9
- 電話番号 : 03-3681-5542
- 営業時間:17:00-22:00
- 定休日:不定休
- 予算:2,000円〜3,000円
- 駐車場の有無:なし
ギャラリー
- その日厳選のおつまみは黒板に書かれる
- お通しの湯豆腐
- こういうレシートが懐かしい





