ディープな街中にあるおしゃれなスタンディングバー
最近、沖縄のバーシーンは驚くほど多様化している。昔ながらの泡盛酒場から、モダンなカクテルバーまで、選択肢は無限大だ。そんな中でも特に注目されているのが、古い街並みの中に突然現れるセンスの良いスタンディングバー。そんな居心地のいい場所を安里の路地裏で発見した「トミヤランドリー」
安里といえば、那覇の中でもディープな雰囲気が残るエリアだ。昼間は地元の人たちが行き交う生活感あふれる商店街だが、夜になると独特の表情を見せる。古いアパートやマンションが立ち並ぶ中、ふと目に留まったのがこの店だった。一見するとクリーニング店のような外観だが、ガラス越しに見える暖かい明かりが、ここが特別な場所であることを静かに主張している。
店の雰囲気
重い扉を押し開けて中に入ると、そこは想像を超えた洗練された空間だった。天井は高めで、温かみのある間接照明が店内を優しく照らしている。カウンターを中心としたスタンディングスタイルの店内は、決して広くはないが、その分お客同士の距離が近く、自然と会話が生まれる雰囲気がある。
壁には古いレコードジャケットやヴィンテージポスターが飾られ、どこか懐かしさを感じさせる。カウンターの向こうには、丁寧に手入れされたボトルが美しく並び、店主のこだわりが随所に感じられる。BGMには心地よいジャズが流れ、安里の喧騒を忘れさせてくれる。
お客は地元の常連らしき人たちから、観光客らしき若いカップルまで様々。みんなが自然体で過ごしており、敷居の高さは全く感じない。店主は気さくな方で、初見の客にも温かく接してくれる。
メニューを眺めながら考える。ドリンクメニューには泡盛ベースのカクテルから、クラフトビール、ワインまで幅広く揃っている。フードメニューも興味深いものばかりで、どれも手作り感が伝わってくる品揃えだ。
まずは「香ばし茶ハイ」をオーダーした。名前だけ聞くとどんな飲み物なのか想像がつかないが、店主のおすすめということで迷わず選択。待っている間も、カウンター越しに見える調理風景が楽しい。

ティーバックが入っているので何回も中の焼酎を継ぎ足しできる。
運ばれてきた香ばし茶ハイを見て、まず驚いたのはその香り。ほうじ茶の香ばしさが立ち上り、それでいて爽やかさも感じられる不思議な一杯だった。色合いは美しい琥珀色で、氷がキラキラと輝いている。
一口飲んでみると、ほうじ茶の香ばしさと焼酎の軽やかさが絶妙にバランスを取っている。甘すぎず、かといって渋すぎることもなく、まさに大人の味わい。沖縄の蒸し暑い夜にぴったりの、さっぱりとした後味が印象的だった。

まるでデザートのように甘い「いちぢくバターとバケット」300円
最初に運ばれてきたのは、いちぢくバターバケット。見た目からして美しく、カットされたバケットの上に、いちぢくのコンポートらしきものが美しく盛られている。バターの香りが立ち上り、甘い香りと相まって食欲をそそる。
一口頬張ると、まずバケットのカリッとした食感が口の中で弾ける。そこに、とろりとしたいちぢくの甘さとバターのコクが重なり、口の中で絶妙なハーモニーを奏でる。いちぢくの自然な甘さは上品で、バターの塩気が全体の味を引き締めている。300円という価格が信じられないほど、丁寧に作られた一品だった。パンの温度も絶妙で、外はカリッと中はふんわり。これだけでも十分に満足できる完成度の高さに感動した。

燻製のような香ばしさ「焼きかぶとほうれん草のお浸し」500円
続いて運ばれてきたのは、焼きかぶとほうれん草のお浸し。一見地味な見た目だが、盛り付けが美しく、野菜の色合いが鮮やかだ。焼いたかぶの表面には軽く焦げ目がついており、ほうれん草の緑が映える。
箸で持ち上げると、焼きかぶのホクホクとした食感がすぐに分かる。口に入れると、かぶの自然な甘さが口いっぱいに広がり、軽く焼いたことで生まれた香ばしさが後から追いかけてくる。ほうれん草のお浸しは、出汁が効いた上品な味付けで、野菜本来の味を大切にしている。
全体的に優しい味わいで、お酒の合間に食べる料理としては最適だった。野菜の甘さと出汁の旨味が絶妙にマッチしており、体に染み渡るような安心感がある。これほどシンプルな料理で感動させられるとは、料理人の腕の確かさを物語っている。

柔らかく煮込まれたレバーにネギが山盛りの「鶏肝ネギまみれ」600円
三品目は鶏肝ネギまみれ。皿に盛られた鶏肝の上に、これでもかというほどのネギが山盛りになっている。見た目のインパクトは十分で、ネギの白と緑のコントラストが美しい。鶏肝特有の鉄っぽい香りに、ネギの爽やかな香りが混じり合っている。
一口食べてみると、まず鶏肝の濃厚な味わいが口の中に広がる。レバー特有のクセは抑えられており、むしろ旨味が凝縮されている印象だ。そこにシャキシャキのネギの食感と辛味が加わり、口の中でリズミカルな変化を楽しめる。
調理法も秀逸でしっとりとした仕上がり。ネギは生のシャキシャキ感を残しつつ、軽く和えられており、鶏肝の濃厚さを見事に中和している。これで600円は破格としか言いようがない。お酒がどんどん進んでしまう、危険な一品だった。

様々な香辛料でスパイシーに仕上げられた「ラム不ドライカレーのあたま」700円
最後に登場したのは、ラムドライカレーのあたま。運ばれてきたのは、スパイスの香りが立ち上る、色鮮やかなドライカレー。上には目玉焼きが乗っており、黄身がとろりと美しい。
スプーンで一口すくって食べてみると、まずスパイスの複雑な香りと辛さが口の中に広がる。ラム肉は臭みが全くなく、むしろ独特の旨味が感じられる。ドライカレーということで水分は少なめだが、その分一粒一粒の米にしっかりと味が染み込んでいる。
目玉焼きの黄身を崩して混ぜると、辛さがまろやかになり、コクが増す。ラム肉の食感はしっかりとしており、噛むたびに肉の旨味がじんわりと広がる。スパイスの効いた刺激的な味わいでありながら、日本人の口にも馴染みやすい絶妙な調整がされている。これで700円とは、この店のコストパフォーマンスの高さを改めて実感した。
「トミヤランドリー」は、路地裏に隠れた珠玉のスタンディングバーだった。ディープな街並みの中にありながら、店内は洗練された大人の空間。リーズナブルな価格でありながら、どの料理も手抜きなく丁寧に作られており、店主のこだわりが随所に感じられる。
特に印象的だったのは、食材の質の高さと調理技術の確かさ。300円から700円という価格帯でありながら、どの料理も期待を上回る満足度だった。
カウンター中心のスタンディングスタイルは、一人でも気軽に立ち寄れる雰囲気を作り出している。常連客との距離感も程よく、初回でも居心地の良さを感じられた。安里という立地も含めて、沖縄のディープな夜を楽しみたい人には最適の店だろう。また訪れたいと思わせる、そんな魅力的な店だった。次回は違うドリンクと料理にも挑戦してみたい。
この店のまとめ
- 安里の路地裏に隠れた洗練されたスタンディングバー
- 300円から700円の良心的価格でクオリティの高い料理
- 香ばし茶ハイなどオリジナリティ溢れるドリンクメニュー
- 一人でも気軽に立ち寄れるカウンター中心の店内
- ディープな街並みとのギャップが生み出す特別感
基本情報
店名: トミヤランドリー
住所: 那覇市安里388-150
営業時間: 18:00-2:00
定休日: 不定休
予算: 2,000円〜3,000円
駐車場: 無し
ギャラリー
- ハイボール
- メニュー
- メニュー
- カップルが多い店内
- 入口の扉はクリーニング店そのもの
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